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収入保障保険は、保険料や保障額から選び始めると、必要以上に大きな保障を持ったり、反対に必要な時期の保障が足りなくなったりしやすい商品です。先にやることは、家庭の「不足額」と「不足が続く期間」を整理すること。金融庁所管の認可法人J-FLECも、死亡時の資金を支出見込額と収入見込額に分け、支出が上回る場合は不足する金額に備える考え方を示しています。

基本の流れは、将来の支出見込額を書き出し、公的保障・企業保障・家族の就労収入・預貯金などの自己資産・すでに契約している死亡保障を差し引き、残った不足額と必要期間を確認することです。公的年金や教育費の数字は、条件を外して使えません。この記事では、数字を当てはめる前の準備から、家族構成による考え方の違い、迷いやすい点まで順番に整理します。

収入保障保険の必要額を出す順番三選

収入保障保険の必要額を出す三選

最初に、支出、入ってくるお金、不足する期間の順で紙や表に置きます。いきなり保険商品の見積もりを開く必要はありません。商品から見ると、提示された保障額に家計を合わせて考えてしまいがちです。家計から見ると、何のための保障なのかを一つずつ説明できます。

  1. 将来の支出見込額を書き出す
  2. 公的保障・就労収入・資産など、入るお金を差し引く
  3. 残った不足額と必要期間を保障の候補にする

この順番で大切なのは、すべての欄を無理に埋めないことです。分からない項目は空欄にせず「確認待ち」と書き、どこで確認するかを隣に添えます。公的保障なら日本年金機構、企業保障なら勤務先、既契約の保障なら保険証券や契約者向け画面という具合です。推測した数字と確認できた数字を同じ表に混ぜないだけで、試算の弱い部分が見やすくなります。

また、不足額は一度決めたら終わりではありません。家族構成、住まい方、進路、働き方、預貯金、既契約の保障が変われば、差し引きの結果も変わります。最初から完璧な答えを作ろうとせず、前提を更新できる試算表を作るほうが実用的です。

不足額を整理してから相談内容を確認

将来の支出見込額を書き出す

支出側には、生活費、教育費、住居費、葬儀費用などを置きます。合計額だけでなく、その支出がいつまで続くかも添えましょう。同じ月額でも、必要な期間が違えば将来の支出見込額は変わります。収入保障保険は毎月の生活を支える目的で検討されやすいため、「総額はいくらか」だけでなく「どの時期に何が必要か」を見える形にすることが欠かせません。

試算表には、費目、見込額、必要期間、根拠、確認先の欄を作ります。生活費は現在の家計明細、住居費は賃貸借契約や住宅ローンの契約内容、教育費は家庭の進路候補を出発点にします。日常の支出と、毎年・進学時・契約更新時などに発生する支出を分けておくと、見落としを減らせます。死亡後に減る支出と残る支出も同じではないため、現在の家計総額をそのまま将来分として置かないことがポイントです。

住居費では、賃貸なら家賃や更新に関する支出、持ち家なら住宅ローンの契約と団体信用生命保険の扱いを確認します。団体信用生命保険があるから住居費はすべて消える、と決めつけるのは早計です。管理に関する支出や住み替えの可能性など、残る項目を家庭ごとに確認します。契約内容が分からない場合は、試算で勝手にゼロにせず、確認待ちとして残します。

教育費は授業料だけに絞りません。文部科学省の「令和五年度子供の学習費調査」では、学校教育費と学校外活動費を含む、全日制高校の保護者が支出した一年間・子供一人当たりの学習費総額は、公立五十九万六千九百五十四円、私立百十七万九千二百六十一円です。高校三年間の各学年平均額の合計は、公立百七十八万四千八百九十五円、私立三百五十二万一千三百六十一円です。

大学について、日本政策金融公庫の「令和三年度 教育費負担の実態調査結果」では、入学費用は国公立大学六十七万二千円、私立大学文系八十一万八千円、私立大学理系八十八万八千円です。一年間の在学費用は、国公立大学百三万五千円、私立大学文系百五十二万円、私立大学理系百八十三万二千円です。いずれも調査対象に基づく平均であり、家庭の請求額や将来の進路を確定する数字ではありません。候補となる進路と現在の積立を並べ、試算の入力材料として使います。

教育方針がまだ決まっていない家庭は、一つの進路に決め打ちせず、家庭内で考えている候補を別々に並べます。ここで大切なのは、もっとも大きな平均値を自動的に採用することではなく、どの前提なら試算がどう変わるかを把握することです。進路の話し合いが済んでいないなら、それ自体が確認項目になります。

生活費・教育費・住居費と必要期間の確認

支出の前提をそろえて保障を検討

公的保障・就労収入・資産などを差し引く

J-FLECは収入見込額の側に、公的保障、企業保障、家族の就労収入、預貯金などの自己資産、民間保険などを置いています。対象の家庭で実際に見込める項目だけを差し引きます。死亡退職金や弔慰金など勤務先の制度がある場合も、制度名だけで判断せず、対象条件と確認できた内容を表へ移します。

差し引く項目は、「資料で確認できたもの」と「条件によって変わるもの」に分けます。預貯金は、残高をすべて死亡保障の試算に使うと決める必要はありません。日常生活や別の目的に残す資産との境界を家庭で決めます。遺族の就労収入も、働けるかどうかを感覚で置かず、現在の働き方、育児や介護、通勤、保育などの事情と一緒に考えます。

遺族基礎年金を受け取れるのは、死亡した人に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」です。ここでいう子は、原則として十八歳到達年度末まで、または二十歳未満で一定の障害状態にある子です。家族がいるから必ず同じ額を受け取れる、という制度ではありません。

二千二十六年四月分から、昭和三十一年四月二日以後生まれの子のある配偶者が対象となる子二人を養育する場合、基本額八十四万七千三百円と、子の加算額二十四万三千八百円を二人分単純加算した年額は百三十三万四千九百円です。受給する配偶者が昭和三十一年四月一日以前生まれなら、年額は百三十三万二千五百円です。配偶者の生年月日、子の人数、子の要件を外して別の家庭に当てはめないようにします。

子自身が受給者になる場合は、子のある配偶者が受け取る場合と計算が異なります。子二人が直接受給する計算では、八十四万七千三百円に二十四万三千八百円を加えた百九万千百円を二人で割り、一人当たり年額五十四万五千五百五十円です。ただし、子のある配偶者が受給している間や、子に生計を同じくする父または母がいる間は、子には支給されません。誰が受給者なのかを先に確認する必要があります。

遺族厚生年金は定額ではなく、原則として死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の四分の三です。報酬比例部分は年金の加入期間や過去の報酬などに応じて決まり、過去の標準報酬月額と標準賞与額には再評価率が使われます。一定の死亡要件では、被保険者期間が三百月未満でも三百月とみなして計算します。六十五歳以上で自分自身の老齢厚生年金の受給権がある配偶者には、別の比較計算と支給調整もあります。

そのため、遺族厚生年金を年収だけから単純に決めることはできません。加入記録や受給要件を確認し、不明な段階では仮の数字を事実のように書かないことが安全です。公的保障を多く見積もれば民間保障が不足しやすくなり、少なく見積もれば必要以上の保障を持つ原因になります。公式情報と本人の記録を組み合わせて確認しましょう。

公的保障・就労収入・資産などの差し引き

公的保障と現在の契約を並べて確認

不足額と必要期間を保障の候補にする

試算は「将来の支出見込額−公的保障−企業保障−遺族の就労収入−預貯金などの自己資産−既契約の死亡保障など」と整理できます。各項目は、その家庭で見込める場合に限って差し引きます。金融庁自身の資料に、この式と同じ三項式がそのまま掲載されているわけではありませんが、金融庁は公的保険制度を踏まえた保障判断を求め、金融庁所管のJ-FLECが具体的な支出と収入の枠組みを示しています。

差し引いて残った額が、新たに備える死亡保障額の候補です。ただし、総額だけを保険商品の保障額へ直結させません。生活費が続く時期、教育費が重なる時期、住居に関する支出が変わる時期を並べ、不足がいつまで残るかを見ます。収入保障保険の商品条件を見るのは、この差額と期間を整理した後です。

不足額が出たら、試算表と現在の契約内容を横に並べます。すでに備えられている範囲、新たに備える候補、確認できていない前提を別の欄に分けましょう。既契約の保険がある場合は、死亡時に受け取れる条件、保障が続く期間、保険料の支払い、対象外となる主な場合を契約資料で確認します。商品名だけでは、試算表のどの不足を埋める保障なのか判断しにくいためです。

不足が出なかった場合も、即座に「保障は不要」と断定しません。差し引いた資産を本当に生活費へ回すのか、就労収入の前提が現実的か、企業保障の対象条件を満たすか、既契約の保障期間が必要な時期を覆うかを見直します。反対に不足額が大きく出ても、平均の教育費や現在の生活費をそのまま将来へ延ばしていないかを確認します。

試算には一つの正解を固定するより、前提が変わったときに戻れる形が向いています。どの数字をどの資料から入れたか、どの項目を家庭の判断で置いたかが分かれば、見直しのたびに最初から作り直さずに済みます。

差し引いて残る不足額と必要期間

差額と期間を整理して保障を比較

一人暮らしと家族で分けて考える

一人暮らしで扶養する家族がいない場合は、家族世帯と同じ形で大きな生活費保障を置くとは限りません。まず、死亡後にも残る債務、住居や家財に関する整理、葬儀に関する希望、誰が手続きを担うか、すでにある資産や保障を確認します。収入保障保険という商品名から必要性を決めず、自分の死亡で経済的に困る人と支出があるかを起点に考えます。

親やきょうだいへ定期的な支援をしている、共有する債務があるなど、扶養の形が書類上だけでは分からない場合もあります。その場合は「一人暮らしだから不要」と短く結論づけず、実際のお金の流れを書き出します。一方で、自分の療養中の生活費は死亡保障とは別の論点です。死亡時の不足と、働けない期間の不足を同じ欄に混ぜないようにしましょう。

配偶者がいる家庭では、死亡後の生活費、住居費、配偶者の就労収入、公的保障、企業保障、自己資産、既契約の保障を並べます。共働きでも、どちらが亡くなっても家計への影響が同じとは限りません。収入だけでなく、家事や育児、介護を誰が担っているかも確認し、役割を代替することで生じる支出がないかを家庭内で話し合います。

子がいる家庭では、遺族基礎年金の対象となる子の条件、遺族厚生年金の加入記録、教育方針、現在の積立、住居の契約を分けて確認します。教育費の平均は出発点にはなりますが、進路を決める数字ではありません。公立と私立の候補を家庭内で話し合い、まだ決まらない部分は複数のケースとして残します。

子が複数いる家庭では、一人分の平均を人数分並べるだけでなく、支出が重なる時期にも目を向けます。ただし、将来の入学時期や進路を断定して数字を作る必要はありません。現在分かっている学年や希望を表に置き、未確定の部分が試算へ与える影響を確認します。家庭内で前提がそろっていないときは、保険の話より先に進路と家計の優先順位を共有するほうが判断しやすくなります。

家族構成に合う保障の考え方を確認

試算でつまずきやすい点

よくあるつまずきは、公的な平均額を自分の必要額としてそのまま採用することです。高校の学習費は全日制の保護者が支出した平均で、学校教育費と学校外活動費を含みます。大学の数字も、調査対象と調査方法に基づく平均です。統計の定義を読まずに授業料だけの数字だと思ったり、将来必ず支払う額だと扱ったりすると、試算の意味が変わってしまいます。

次につまずきやすいのは、遺族年金を家族の人数だけで決めることです。遺族基礎年金には受給者と子の要件があり、遺族厚生年金は加入期間や過去の報酬などに応じて決まります。配偶者自身の老齢厚生年金の受給権などによる調整もあるため、ネット上の例と家族構成が似ているだけで同額と考えないようにします。

資産の引き過ぎにも注意が必要です。預貯金があるからといって、その全額を死亡後の生活費へ使えるとは限りません。別の目的に確保している資産、すぐに使えるか確認が必要な資産、名義や手続きの確認が必要なものを分けます。残高だけでなく、誰が何のために使う資産なのかを決めてから差し引きます。

就労収入を楽観的に置くことも試算を小さく見せる原因になります。子育てや介護をしながら現在と同じ働き方を続けられるか、死亡した家族が担っていた役割をどう補うかは、家庭ごとに違います。反対に、まったく働けないと決めつけて大きく見積もるのも適切ではありません。分からない前提は複数のケースに分けます。

保険料だけで比較を終えるのも避けたいところです。必要な保障額と期間が違う商品を、月々の支払いだけで並べても同じ条件の比較にはなりません。保障される条件、保障が続く期間、受け取り方、支払われない主な場合、現在の契約との重なりを同じ順番で確認します。説明を聞いて分からない部分は、資料の該当箇所を示してもらいながら確認を進められます。

最後に、古い契約を先に解約しないこと。新しい提案を検討する場合でも、申込みと契約成立は同じではありません。現在の保障をなくす判断は、新しい契約の状況と条件を確認してから行います。試算表は契約を急ぐためではなく、確認すべき順番を整えるために使うものです。

試算の不明点を残したままにしない

収入保障保険のよくある質問

教育費の平均をそのまま保障額に入れてもよいですか?

そのまま家庭の必要額にするのではなく、進路候補を考える材料として使います。文部科学省の高校の数字は学校教育費と学校外活動費を含む平均で、日本政策金融公庫の大学の数字も調査対象に基づく平均です。家庭の進路、現在の積立、奨学金を含む資金計画など、実際に見込む条件と分けて整理してください。

遺族年金は年収だけで計算できますか?

年収だけでは確定できません。遺族基礎年金は受給者や子の要件があり、遺族厚生年金は死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分をもとにします。加入期間、過去の報酬、死亡要件、受給者側の年金などが関わるため、公式情報と本人の加入記録を確認します。

預貯金はすべて不足額から引けばよいですか?

すべてを差し引く必要はありません。死亡後の生活に使う範囲、別の目的のために残す範囲、すぐに使えるか確認が必要な範囲を家庭で分けます。預貯金という名前だけで一括せず、用途と使える状態を確認してから試算へ入れます。

不足額が出なければ収入保障保険は不要ですか?

計算結果だけで即断せず、前提を点検します。公的保障の受給要件、企業保障の対象条件、就労収入の見込み、資産を使う範囲、既契約の保障期間が現実に合っているかを確認してください。前提を確認しても不足がないなら、新たな死亡保障を持たない判断も比較対象になります。

保険相談へ行く前に何を用意すればよいですか?

家計明細、住居の契約内容、年金の加入記録、勤務先の保障資料、預貯金などの自己資産、現在の保険契約が分かる資料を整理します。すべてがそろわなくても、足りない資料と確認先をメモすれば相談の目的が明確になります。相談先で答えを決めてもらうのではなく、自分の前提を確認する場として使うと比較しやすくなります。

疑問をメモして相談前の準備へ

試算した後に今できること

まず、生活費、教育費、住居費などの支出と必要な期間を書きます。次に、日本年金機構の公式情報と本人の加入記録、勤務先の企業保障、家族の就労収入、預貯金などの自己資産、既契約の保険を確認します。最後に、それらを差し引いて残る額と期間を、現在の保障内容と照らし合わせます。

書き出しの段階では、保険商品を先に決める必要はありません。支出側と差し引き側の前提がそろうと、保障額と期間を比べる軸ができます。根拠の出所が分かるように、家計明細、勤務先の制度資料、年金の加入記録、保険の契約内容を試算表と一緒に整理します。分からない欄は推測で埋めず、確認項目として残しましょう。

家族と話すときは、保険に入るかどうかだけを議題にせず、守りたい生活、希望する進路、住まいをどうするか、働き方をどう見込むかを共有します。前提が違うまま商品を比較すると、保障額の大きさだけで意見がぶつかりやすくなります。試算表を見ながら、どの項目に合意できていて、どこが未確定なのかを分けると話しやすくなります。

自分だけで整理しにくい場合は、試算表と資料を持って保険相談を利用する方法もあります。相談では、提案された商品の名前だけでなく、どの不足を補う提案なのか、現在の保障とどこが重なるのか、別の候補と何が違うのかを確認します。説明が分かりにくい部分は、資料上の根拠をその場で示してもらえます。無料相談は日程を選んで予約でき、必要な資料を持って一度で確認を進められます。

関連記事の保険見直しまとめ|公的保障から確認する順番では、加入中の保障を見直す流れも整理しています。収入保障保険だけを単独で見るのではなく、現在の死亡保障や公的保障と重ねて確認したいときに活用してください。

支出・入るお金・不足期間をまとめて確認

出典

  • J-FLEC「第11回 リスクに備える①―生命保険を中心に―」
    https://www.j-flec.go.jp/wpimages/uploads/collaborative-courses011_202412.pdf
  • 日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」
    https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-04.html
  • 日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」
    https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html
  • 日本年金機構「は行 報酬比例部分」
    https://www.nenkin.go.jp/service/yougo/hagyo/hoshuhirei.html
  • 文部科学省「令和5年度子供の学習費調査結果のポイント」
    https://www.mext.go.jp/content/20260116-mxt_chousa01-000039333_1.pdf
  • 日本政策金融公庫「令和3年度 教育費負担の実態調査結果」
    https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kyouikuhi_chousa_k_r03.pdf
  • 金融庁「金融経済教育について」
    https://www.fsa.go.jp/teach/kyouiku.html
  • 金融庁「保険会社向けの総合的な監督指針」
    https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/ins/02d.html
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