オルカンの純資産総額13兆円、楽天オルカンは1兆円。それでも信託報酬の差は年144円でした
オルカンの商品ページを開くと、まず目に入るのが純資産総額です。eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は13兆6,193.02億円。楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンドは1兆50.30億円。どちらも2026年8月20日の数字で、割ると約13.6倍の開きがあります。
ここまで違うと、「大きいほうを選んだほうが自分のお金も増えやすいのでは」と思いますよね。数字が大きいほど強く見えるのは、ごく自然な感覚だと思います。でも、ファンド全体の大きさと、自分の口座の増え方は、いったん切り離して考えられます。
先に結論だけ書いておきます。純資産総額は順位表ではなく、運用を続けるための「器」を見る数字です。十分な規模があることを確認できたら、あとはコスト、指数への連動、そして自分が積み立てを続けられるか。見る場所はそちらへ移して大丈夫です。
この記事では、純資産総額と基準価額がどう違うのか、配当を運用の中に残す意味、信託報酬と運用報告書の費用明細、そして規模が実際に効いてくる場所を、順番に見ていきます。読み終えるころには、いま積み立てているものを慌てて乗り換える必要があるのかどうか、自分で判断できるはずです。
目次
大きいファンドほど増えそうに見えるのはなぜか
資産形成の話では「雪だるまを大きくする」という言い方をよく使います。だから純資産総額が13兆円のファンドを見ると、大きい雪だるまに自分のお金を乗せたほうが有利そうに感じる。この感覚、決しておかしくありません。
実際、自分の資産に置き換えると完全に正しい話でもあります。同じ5%でも、元手が100万円なら5万円、1,000万円なら50万円。元になる金額が大きいほど、同じ率でも動く金額は大きくなります。ここは間違いなくその通りです。
問題は、これをファンド全体にそのまま当てはめてしまうところ。純資産総額1兆円のファンドが5%上がれば500億円増えますし、10兆円なら5,000億円増えます。金額を見比べれば、たしかに桁が違います。
でも私たちが受け取るのは、その5,000億円ではありません。受け取るのは「1口あたり何%増えたか」のほう。1兆円のファンドも10兆円のファンドも、5%上がれば5%です。両方に100万円ずつ入れていたら、どちらも105万円。巨大なファンドだからといって、自分の5%が10%になったりはしません。
純資産総額はあくまで、運用資産を入れる器の大きさです。器が大きいこと自体には意味がありますが、その意味を「自分の資産も増えやすい」に置き換えないこと。ここが出発点になります。

純資産総額と基準価額は、まったく別の数字
純資産総額は、ファンド全体が持っている資産の合計。基準価額は、保有の単位である口数1口あたりの価値です。名前も並び順も似ているので混ざりがちですが、指しているものが違います。
数字を小さくすると、違いがはっきり見えます。
説明用に、純資産総額100億円・口数100億口のファンドを考えてみてください。1口あたりの価値は1円ですね。
ここへ新しく100億円が入ってきました。純資産総額は200億円になります。では前から持っていた人の資産も倍になるかというと、なりません。新しく100億円を出した人には、その分の口数が新しく発行されるからです。200億円を200億口で割ると、1口はやっぱり1円のまま。
ここが銀行口座との決定的な違いです。銀行口座は、入金すればその分だけ残高が増えます。投資信託は、お金が入ると同時に取り分(口数)も増える。だから既存の保有者の1口は、資金流入だけでは動かないんです。
引っ越しのときの段ボールに近いかもしれません。箱が大きくなったこと自体は、中に入っている食器の価値とは関係がない。純資産総額が増えているのは「箱が大きくなった」という事実であって、そこから自動的に「1口が値上がりした」にはつながりません。
もちろん、純資産総額が伸びていること自体は、資金が集まっている様子を知る材料になります。ただ、それを自分の残高の伸びと同じ線の上に置かないこと。まずはここを分けておくと、大きい数字に引っ張られにくくなります。

大きくしたい雪だるまは、自分の残高のほう
では、増やすほうの話はどこで効いてくるのか。効くのは、自分が持っている資産のほうです。
長期投資でよく言われる複利的な増え方も、ファンド全体の13兆円に対して働くわけではありません。受け取った配当を外に出さず、運用の中に残す。残った分が次の値動きを受ける。この繰り返しが起きるのは、あくまで自分の保有分に対してです。
ちなみに、株式型の投資信託は銀行預金のような複利商品ではありません。上がる年もあれば下がる年もありますし、為替ヘッジのない商品なら為替でも動きます。「毎年きっちり5%」という話ではないことは、先に押さえておきたいところです。
そのうえで、配当を中に残すかどうかで結果がどれくらい変わるのか。S&P Dow Jones Indicesが出している長期の比較が分かりやすいです。1930年1月を起点にすると、2025年2月末の比較値は、配当を含まない価格リターンが278、配当を再投資した場合が9,584でした。
ここは誤読しやすいので、ひとつ補足させてください。9,584はいまのS&P500の指数の水準ではありません。1930年1月という同じ起点から、配当を再投資しなかった場合と、した場合を並べた比較値です。S&P500の算出開始は1957年3月4日なので、それより前の部分にはバックテストによる仮想データが含まれます。
同じ資料には、1926年から2025年2月までの月次トータルリターンのうち、配当の寄与が31%、値上がりの寄与が69%という記載もあります。
これはS&P500の過去の話であって、オルカンの将来を保証するものではありません。それでも、「配当を運用の外に出すか、中に残すか」が長い時間軸で効いてくることは読み取れます。そして繰り返しになりますが、それが効く対象は自分の残高です。100万円を1,000万円に、1,000万円を3,000万円に。育てる先はこちらです。
毎月の積立先を考えるとき、純資産総額の順位を追いかける必要はありません。自分が選んだ商品がどの指数に連動しようとしていて、配当をどう扱うのか。そこを確認したうえで、無理なく続けられる金額に設定する。やることはシンプルです。

純資産総額は約13.6倍。ではコストの差は?
ここからは実際の数字で比べていきます。2026年8月20日時点で、eMAXIS Slimオルカンが13兆6,193.02億円、楽天オルカンが1兆50.30億円。約13.6倍の開きです。
信託報酬(税込・年率)はこうなっています。
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):0.05775%以内
- 楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンド:0.0561%
お気づきでしょうか。表面の数字だけ見ると、規模が13分の1の楽天オルカンのほうが安いんです。
ただ、eMAXIS Slimオルカンには続きがあります。純資産総額に応じて信託報酬率が段階的に下がる仕組みが入っているんですね。目論見書にはこう書かれています。
- 5,000億円未満の部分:0.05775%
- 5,000億円以上1兆円未満の部分:0.05764%
- 1兆円以上の部分:0.05753%
運用会社の説明では、この引き下げ後の率が適用されるファンドを持っている人は、全員がその対象になります。一部の大口だけが得をする仕組みではありません。
では13兆6,193.02億円まで育ったいま、実際の率はどこまで下がっているのか。区分ごとに計算して足してみます。
(5,000億円×0.05775% + 5,000億円×0.05764% + 126,193.02億円×0.05753%)÷ 136,193.02億円 = 約0.05754%
一番上の区分0.05775%との差は、約0.00021ポイント。1,000万円を持っていたとして、単純計算で年およそ21円です。自動販売機のお茶1本にも届きません。
そして楽天オルカンの0.0561%と比べると、差は0.00144ポイント。1,000万円で年およそ144円です。純資産総額には約13.6倍の差があるのに、コストに置き換えるとこの金額。しかも安いのは規模が小さいほうでした。
つまり「大きいファンドほど必ずコストも安い」わけではないんですね。信託報酬は運用会社の値付けと競争でも決まるので、規模だけでは決まりません。
なお信託報酬は日々の純資産総額に対してかかるので、実際の負担額は毎日動きます。上の計算はあくまで基準日の残高を使った単純計算だと思ってください。
運用報告書の「1万口当たりの費用明細」も見ておく
信託報酬の表示だけでは拾えない費用もあるので、運用報告書も確認しておきます。eMAXIS Slimオルカンは26円・0.085%(第8期:2025年4月26日〜2026年4月27日)、楽天オルカンは17円・0.118%(第2期:2024年7月17日〜2025年7月15日)でした。
数字だけ並べると前者が低く見えます。でも、ここで「だからeMAXIS Slimが安い」と結論を出すのはフェアではありません。対象期間が1年ずれているからです。
楽天オルカンはこの間に純資産総額を大きく伸ばしています。規模が変われば1口あたりの費用の出方も変わるので、同じ土俵での比較になっていないんですね。個人的には、1兆円まで育ったあとの数字が次の運用報告書でどう出てくるかのほうが気になっています。
スーパーで洗剤を比べるとき、棚の値札だけでなく容量も見ますよね。投資信託の費用も同じで、「どの資料の、どの期間の集計か」をセットにしないと比較になりません。

純資産総額が大きいことの意味は「器」にある
ここまで書くと純資産総額に意味がないように聞こえますが、そうではありません。効いてくる場所が、リターンではなく器のほうだ、という話です。見どころは3つあります。
1. 規模の経済が働く
Investment Company Instituteは、投資信託の経費率が下がってきた要因として、競争と規模の経済を挙げています。移転代理人費用、会計監査費用、取締役報酬といったおおむね固定額の費用は、資産が増えるほど経費率への寄与が下がる、という説明です。
工場でイメージすると分かりやすいです。100個しか作れない工場と10万個作れる工場では、同じ設備費でも1個あたりの負担がまるで違います。投資信託も基本は同じ構造です。
ただし、これは無限に効き続けるものではありません。さきほど計算したとおり、13兆円まで育っても一番上の区分との差は年0.00021ポイント。砂利道を高速道路にすれば劇的に速くなりますが、渋滞していない8車線を16車線にしても、目的地には半分の時間では着かない。いまはそういう領域に入っています。
2. 運用が終わりにくい
eMAXIS Slimオルカンの目論見書には、受益権の口数が10億口を下回ることとなった場合などに、信託期間を繰り上げて償還することがあると書かれています。楽天オルカンにも、同じく10億口を下回った場合などに、受託会社との合意のうえで運用を終了できる条項があります。
どちらも、対象指数の改廃、受益者に有利と認められる場合、やむを得ない事情など、口数以外の条件も並んでいます。そして条件になっているのは純資産総額ではなく口数です。「大きければ絶対に償還されない」とまでは言えないので、そこは正確に読んでおきたいところ。
とはいえ、長く積み立てるつもりの商品が途中で終わってしまうのは避けたいですよね。一定以上の規模があることは、その心配を小さくする材料にはなります。
3. 使っている人が多い
eMAXIS Slimオルカンの保有者数は2026年6月末で約686万人、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は約590万人と公表されています。オルカンは2026年1月から6月の半年で約118万人増え、新NISA開始直前の約255万人から約2.7倍になりました。
この数字にも注釈があります。主要ネット証券5社へのヒアリングに基づく延べ人数で、同じ人が複数の証券会社で買っていれば複数回カウントされます。名寄せした実人数ではないので、「686万人が別々の個人」とは読めません。
それでも、多くの人が使っている商品だという方向感はつかめます。規模の経済、償還のされにくさ、利用の広がり。どれもリターンを増やす話ではなく、長く持ち続けられるかどうかの話です。

見るのは「一番大きいか」ではなく「十分か」
最後に整理します。
純資産総額が大きいファンドを見て頼もしく感じるのは自然なことです。ただ、新しいお金が入れば口数も一緒に増えるので、純資産総額が伸びただけで1口の価値が上がるわけではありません。
今回並べた2本は、純資産総額に約13.6倍の差がありました。それでも信託報酬の差は、1,000万円を持っていて年およそ144円。運用報告書の費用明細は対象期間が違うので、そもそも横並びで比べられません。
だから純資産総額は「順位」ではなく「十分か」で見るのがいいと思っています。十分な規模がある。コストが低い。指数にきちんと連動している。そして自分が長く持ち続けられる。ここまで揃っているなら、1兆円か10兆円かを競わせる意味は小さくなります。
週末に家計簿を開いて積立額を見直すなら、確認する順番はこうです。まず十分な規模があるか。次にコストを自分の保有額に当てはめると年いくらか。最後に、その商品を自分が続けられるか。純資産総額の順位は、この3つのどれよりも優先されるものではありません。
いま積み立てているファンドがその条件を満たしているなら、慌てて乗り換える話ではありません。むしろ手を止めずに続けること、そして入金の額を少しずつ上げていくこと。育てる雪だるまは、ファンド全体ではなく自分の残高のほうです。

オルカンの純資産総額でよくある質問
純資産総額が増えたら、基準価額も上がりますか?
資金の流入で純資産総額が増えても、対応する口数も同時に増えるため、それだけで1口の価値が上がるわけではありません。純資産総額と基準価額は分けて確認してください。
純資産総額が大きいファンドへ乗り換えたほうがいいですか?
順位だけを理由に、いま持っているファンドから慌てて乗り換える必要はありません。十分な規模があるかを確認したうえで、コスト、指数への連動、そして自分が積み立てを続けられるかを見てください。
約13.6倍の規模差があれば、コストも同じくらい違いますか?
違いません。eMAXIS Slimオルカンの実効率を約0.05754%として単純計算すると、楽天オルカンの0.0561%との差は0.00144ポイント。1,000万円を持っている場合で、年およそ144円にあたります。
運用報告書では0.085%と0.118%ですが、どちらが安いですか?
対象期間が違うので、この数値だけで一方が安いとは言えません。eMAXIS Slimオルカンは2025年4月26日から2026年4月27日、楽天オルカンは2024年7月17日から2025年7月15日の費用明細です。比べるときは対象期間もセットで見てください。
純資産総額が小さいと、運用が終わってしまうことはありますか?
両ファンドとも、受益権の口数が10億口を下回った場合などに運用を終了できる条項があります。ただし条件になっているのは純資産総額ではなく口数で、対象指数の改廃などほかの条件も並びます。目論見書の繰上償還の項目を確認するのが確実です。
投資判断はご自身の責任で行ってください。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。純資産総額や費用の数値は、各資料の基準日によって変わります。

出典
- 三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」 https://emaxis.am.mufg.jp/fund/253425.html
- 楽天投信投資顧問「楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンド」 https://www.rakuten-toushin.co.jp/fund/nav/riracwi/
- 三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)投資信託説明書(交付目論見書)」 https://www.am.mufg.jp/pdf/koumokuromi/253425/253425_20260725.pdf
- 楽天投信投資顧問「楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンド 投資信託説明書(交付目論見書)」 https://www.rakuten-toushin.co.jp/fund/nav/riracwi/pdf/riracwi_P.pdf
- 三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)運用報告書(全体版)第8期」 https://www.am.mufg.jp/pdf/zenunyou/253425/253425_20260427.pdf
- 楽天投信投資顧問「楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンド 交付運用報告書 第2期」 https://www.rakuten-toushin.co.jp/fund/nav/riracwi/pdf/riracwi_Ak.pdf
- 三菱UFJアセットマネジメント「『eMAXIS Slim(イーマクシス スリム)』オルカンの保有者が半年で118万人増加し686万人に、新NISA開始後2.7倍」 https://www.am.mufg.jp/assets/pdf/fund/253425s_260731.pdf
- S&P Dow Jones Indices「S&P 500 Dividend Aristocrats: The Importance of Stable Dividend Income」 https://www.spglobal.com/spdji/en/documents/research/research-sp500-dividend-aristocrats.pdf
- Investment Company Institute「2026 Investment Company Fact Book」 https://www.ici.org/system/files/2026-04/2026-factbook.pdf




