学資保険はいらない理由?返戻率105%を18年インフレで検証
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最終更新日: 2026年7月22日
・学資保険の返戻率105%は、払込総額に対する「名目」の増え方であり物価上昇は考慮されていない
・直近4年の物価上昇ペース(総務省統計局・年平均約2.9%)が18年続くと仮定すると、満期金300万円の実質価値は今のお金でおよそ179万円相当まで下がる
・それでも「自動的に貯まる強制力」と「契約者死亡時の保険料免除」は新NISAにはない価値。何を優先するかで結論は変わる
「学資保険、いらないって聞くけど、うちが入ってるのは大丈夫なのかな」
子どもの教育費を考え始めた頃、僕も同じことを思った。返戻率105%と言われると増えている気はするけど、それが18年後にどれくらいの価値を持つのか、パンフレットには書いていない。
僕は40代で2児の父親をしている。クレジットカードを20枚持ち、ANAのダイヤモンド会員でもあるので、お金の増やし方には人よりは詳しいほうだと思う。
ただ学資保険については、僕自身も「入るべきか」で一度迷った側の人間だ。
この記事では、返戻率105%という数字を18年間の物価上昇と一緒に見たときの実質を確認する。そのうえで児童手当+新NISAという代替案と、学資保険にしかない「強制力」の価値も、できるだけ公平に並べて整理する。
学資保険の仕組みと返戻率の見方
学資保険は、毎月(または毎年)一定の保険料を払い込み、子どもの進学に合わせて満期金・祝金を受け取る保険だ。返戻率は「受け取る総額÷払い込む総額×100」で計算される。返戻率105%なら、払った分より5%多く戻ってくるという意味になる。
2026年時点で比較サイトが集計する各社の公表返戻率は、上位のソニー生命・明治安田生命・日本生命あたりで109%を超える商品もある一方、JA共済・太陽生命・住友生命・第一生命・かんぽ生命などは100〜105%帯に収まる商品が目立つ(参考:ほけんの読みもの 学資保険返戻率ランキング2026)。契約者年齢が高い、払込期間が長いなど条件が重なると、この返戻率はさらに下がる。
この記事では、話をシンプルにするため「満期300万円・18年間・返戻率105.2%」というモデルケースで考える。月々13,200円を216ヶ月(18年)払い込むと払込総額は285万1,200円、満期時に300万円を受け取るので、増えた金額は14万8,800円になる。

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返戻率105%を18年で見ると実質どうなるか
ここが今回一番伝えたいところだ。返戻率105%という数字は「名目」の増減であり、物価が上がるかどうかは一切含まれていない。同じ300万円でも、18年後の300万円と今の300万円では、買えるものの量が違う可能性がある。
総務省統計局の消費者物価指数(全国)によると、2022年は前年比+2.5%、2023年は+3.2%、2024年は+2.7%、2025年は+3.2%と、4年連続で2%を超える上昇が続いている(出典:総務省統計局 消費者物価指数)。この4年間の平均はおよそ年2.9%になる。
あくまで仮定の話として、この年2.9%のペースが今後18年間続いたとすると、物価はおよそ1.67倍になる計算だ(1.029の18乗)。この前提を当てはめると、18年後に受け取る満期金300万円の実質的な価値は、今のお金に換算しておよそ179万円相当まで下がる可能性がある。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 満期時の受取額(名目) | 300万円 |
| 18年間の払込総額 | 約285万1,200円 |
| 増えた金額(名目) | 約14万8,800円 |
| 物価上昇後の実質価値(仮定) | 約179万円相当 |
正直、最初にこの計算をしたとき「実質マイナスか」と少し身構えた。ただ払込側の負担も同じ物価上昇の影響を受けて軽くなる面がある。この点は後の章で公平に触れる。
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児童手当+新NISAという代替案の計算
学資保険に入らない場合の代替案としてよく挙がるのが、児童手当をそのまま積み立てる、または新NISAで運用する方法だ。まず前提となる児童手当の金額を確認する。
2024年10月の制度改正で所得制限が撤廃され、支給対象は高校生年代までに延長された。第1子・第2子は0〜3歳未満が月15,000円、3歳〜高校生年代が月10,000円だ(出典:こども家庭庁 児童手当制度のご案内)。
詳しい内訳と第3子以降の金額は児童手当拡充後の総額シミュレーション記事にまとめてある。
この金額を0歳から高校生年代を終えるまで受け取り続けると、15,000円×36ヶ月+10,000円×180ヶ月=234万円になる。学資保険の満期300万円と比べると見劣りするが、児童手当は「もらったお金をどう使うか」を自分で選べる点が学資保険と違う。
この234万円を、受け取るたびに新NISAのつみたて投資枠(年間120万円まで・非課税保有限度額1,800万円)で積み立て運用したとする。新NISAは2024年1月に恒久化された制度で、運用中の値上がりや配当に税金がかからない(出典:金融庁 NISA特設ウェブサイト)。
仮に年3%の想定利回り(証券会社のシミュレーターで使われる保守的な想定の一つ)で複利運用できたとすると、18年後はおよそ316万円になる計算だ。ただし利回りは保証されない。
新NISAとiDeCoのどちらを優先すべきかはiDeCoとNISAどちらを選ぶかの記事、口座をどの証券会社で開くかはネット証券の比較記事で詳しく書いている。
子ども1人・18年間で比べると、学資保険は名目300万円、児童手当をそのまま置いておくと234万円、児童手当を年3%想定で運用できた場合はおよそ316万円(いずれも仮定を含む試算)
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インフレが学資保険に与える影響
先ほどの3つの金額を、同じ物価上昇の仮定(年2.9%が18年続く=物価1.67倍)で今のお金に置き換えるとどうなるか。ここまで計算してみて、僕自身も数字の並びに少し驚いた。

| 受け取り方 | 実質価値(仮定・今のお金換算) |
|---|---|
| 学資保険(名目300万円) | 約179万円 |
| 児童手当をNISA運用(名目約316万円) | 約189万円 |
| 児童手当をそのまま置く(名目234万円) | 約140万円 |
この試算だと、運用しなかった児童手当(234万円)が一番実質価値が低くなる。学資保険とNISA運用は、名目の差(300万円対316万円)がそのまま実質の差(179万円対189万円)にも表れている。つまり「増えるかどうか」で見れば、名目でも実質でもNISA運用のほうが有利になりやすい、という結果だ。
ただし、ここで一つ公平に書いておきたいことがある。学資保険の払込も18年間かけて行うので、後半に払う保険料ほど物価上昇の影響で実質的な負担は軽くなる。
受け取る側だけでなく払う側も同じインフレの影響を受けるという意味では、学資保険が一方的に不利になるわけではない。それでも、契約時に約束された金額が名目で固定されている以上、「増える利率が物価上昇に追いつくかどうか」という不確実性は残る。
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「強制力」という学資保険の価値も公平に見る
ここまで数字だけ見ると学資保険は分が悪く見えるが、それだけで「いらない」と結論づけるのは早いと思う。学資保険には、数字に出てこない価値が2つある。
1つ目は、口座振替で自動的に積み立てが続く「強制力」だ。新NISAは自分で毎月ボタンを押す(あるいは自動設定を維持する)意思が必要で、家計が厳しい月に途中でやめてしまう人もいる。学資保険は保険料が生活費と一緒に自動で引かれるので、意志力に頼らず18年間続けやすい。
2つ目は、契約者(親)が死亡・高度障害になった場合に以降の保険料が免除され、それでも満期金は契約どおり受け取れるという保険機能だ。これは多くの学資保険に共通する特則で、新NISAにはない。NISAで積立中に契約者が亡くなった場合、その時点までの残高がそのまま遺産として遺るだけになる。
同僚のパパに聞いた話では、学資保険に入っていたおかげで「もし自分に何かあっても学費だけは確保されている」という安心感が大きかったそうだ。逆に僕は意志力にはそこそこ自信があるタイプなので、実感として持ちにくく、判断が分かれるポイントだと感じた。生命保険的な機能だけを切り離すなら、掛け捨て型の生命保険との比較も参考になる(掛け捨て生命保険の記事)。
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結局どちらを選ぶべきかの判断基準
ここまでの内容を、実際に選ぶときの手順に落とし込む。
- まず「積立を自分の意志で18年間続けられるか」を自己採点する。自信がないなら学資保険の強制力に価値がある
- 次に「契約者に何かあったときの保険機能が家計に必要か」を確認する。すでに十分な生命保険に加入しているなら、学資保険の保険機能は重複になりやすい
- それでも増やす目的を優先するなら、児童手当+新NISAのつみたて投資枠を検討する。ただし元本割れの可能性があることは前提にする
- すでに学資保険に加入済みの場合、途中解約は払込総額を下回る「解約損」が出やすいので、やめるかどうかは慎重に判断する

迷ったときに思うのは、「増える金額の大きさ」だけで選ぶと痛い目を見やすいということだ。強制力や保険機能という数字に出にくい価値も、一緒に天秤に乗せて決めたほうが後悔しにくい。
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よくある質問
Q1. 学資保険はいらないというのは本当ですか?
一律に「いらない」とは言えない。返戻率だけで見れば新NISA等の運用に劣る場面が多いが、自動的に積み立てが続く強制力や、契約者死亡時の保険料免除機能を重視するなら、学資保険にも価値がある。
Q2. 児童手当だけで大学費用は準備できますか?
第1子・第2子で18年間の総額はおよそ234万円(出典:こども家庭庁)。国立大学の4年間だけでも数百万円規模の費用がかかるとされるため、児童手当単体では不足しやすく、別の積立や運用と組み合わせるのが前提になる。
Q3. 学資保険と新NISA、どちらが安全ですか?
学資保険は契約時に将来の受取額が名目で決まっているため、名目上の金額は保証される(保険会社の経営破綻等のリスクは別)。新NISAは元本保証がなく、運用結果によって受取額が増減する。「安全」の意味が名目か実質かで評価が変わる。
Q4. 学資保険に入っている場合、途中でやめても大丈夫ですか?
途中解約は、それまでの払込総額を下回る返戻金しか戻らない「解約損」が出やすい。やめる前に、今後の払込を続けた場合の最終的な返戻率と、解約した場合の損失額を保険会社に確認してから判断したい。
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まとめ:返戻率の数字だけで判断しない
学資保険の返戻率105%は、払込総額に対する名目の増え方であり、物価上昇は含まれていない。直近4年間の物価上昇ペース(年平均約2.9%)が18年続くという仮定を置くと、満期金300万円の実質価値は今のお金でおよそ179万円相当まで下がる可能性がある。児童手当+新NISAの運用は、名目でも実質でもやや有利になりやすいが、元本保証はない。
この記事の判断基準をやるべきなのは、これから学資保険に入るかどうかを迷っている家庭、または児童手当の置き場所をまだ決めていない家庭だ。積立を自分の意志で続けられる自信があり、生命保険で保険機能をすでに確保できているなら、児童手当+新NISAを軸にする選択肢は十分にある。逆に、意志力に自信がなく「自動で貯まる仕組み」を優先したい家庭、あるいは契約者に何かあった場合の安心を重視する家庭は、学資保険の強制力に価値を感じてよいと思う。
すでに加入していて満期が近い家庭は、今から解約する必要はない。解約損が出やすいので、残りの払込期間と最終的な返戻率を確認してから判断すれば十分だ。
大事なのは「名目の数字」と「実質の価値」を分けて見る習慣を持つことだと思う。この記事の計算は一つの仮定に基づく試算であり、実際の物価や運用成績はこの通りにはならない。それでも仮定を置いて計算してみると、パンフレットの数字だけでは見えなかった判断材料が手に入る。
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